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発覚。

―――たかみね………しのぶ…? 仕事の片手間にと… 信が自宅から持参したノートPCで 葵の通っていた沈丁花高校のサーバーにアクセスし―― ものの数分で葵の個人情報の入ったファイルは簡単に見つけ出す事は出来たのだが… そこに記載されていた保護者欄の名前を見て… 信は眉を顰めて困惑した ―――高峰忍といったらまさか…    この間の沢辺さん主催の昼食会で出会ったあの人の事か…? 『斎賀さん、コチラ教材用のソフトウェアなどの開発、販売を行っている会社  『hope』の代表取締役社長…高峰 忍さん。  高峰さん…コチラは『World recovery』の会社社長、斎賀 信さんです。』 『貴方があの…!…っ初めまして斎賀さん…お噂はかねがね…』 信の脳裏に… 整った顔立ちに人のよさそうな笑みを浮かべ―― 何食わぬ顔で自分に握手を求めて手を差し出してきた時の高峰の顔が過り… 信の眉間に益々皺が寄る ―――もしあの人が葵の“父親”なら…    徹底的に調べてみる必要があるワケだが――        だがしかし……    本当にあの人が――    葵の“父親”なのか…?    確かに整った顔はしてはいたが…    葵とは全然…似ても似つかない様な気がするんだが… 保護者欄に書かれていた高峰 忍の年齢は42… 葵くらいの歳の子がいてもなんら不思議はない年齢ではあるのだが―― 信が昼食会で会った“高峰 忍”はその年齢よりも若く見え… その上日本人にしてはやや褐色気味な肌の色に 彫りの深いその顔立ちはどこか中東系の血が混じっているようにも見え… 色白で生粋の日本人に見える葵とはとても血が繋がっているようには見えず 信は首を傾げる ―――まあなんにせよ、だ…    この収穫を元に――“高峰 忍”については慎重に調べを進めないと…    なんせ俺が昼食会で会った“高峰 忍”と――    この葵の保護者として名前が載ってる“高峰 忍”が    同一人物とは限らない訳だし…    ソレを知る上でもせめてヒントとなる葵の父親の職業だけは    知っておきたかったんだが――    まあいい。    まずは『hope』の方の“高峰 忍”を調べて―― 信がノートPCをパタン…と閉じ… 鞄にそのPCをしまおうとしたその時 「お待ちください真壁様っ!またアポもなしにこんな――」 「…」 ―――またか… 廊下から聞こえてきた梶の慌た様子の声に信はひっそりと溜息をつくと 社長室唯一のドアに視線を向ける… すると程なくしてドアはガチャッ!と無遠慮に開き… 信は呆れた様子で社長室に入って来た人物に向け声をかけた 「………またいらしたんですか?真壁 仁警部補殿…」 「ああ…また来た。」 悪びれる様子もなく… 面と向かってデスクに座る信に仁はそう言うと ツカツカと信に歩み寄り… 信はそんな仁を見てもう一度溜息をつくと―― 仁の後ろから息を切らせて社長室に入って来た梶に向かって口を開いた 「…ごくろーさま梶君。  ココはもう良いから……キミは自分の仕事に戻って。」 「っしかし――」 「いいから。後は私に任せて…」 「ッ……では…失礼いたします。」 梶は信にスッ…と頭を下げると 珍しく怒った様子で背後から仁の事をキッと睨みつけてから 踵を返して社長室を出て行き… 信はそんな梶にヒラヒラと手を振って笑顔で見送ると 椅子の背もたれに寄りかかりながら静かに口を開いた 「…そろそろ此処の警備員を増やして――  ついでにシークレットサービスでも雇うかな。」 「信。」 デスクの前まで来た仁が、椅子に座る信を見下ろす 「…怪我の具合はどうだ?」 「…おかげさまで。………で?  わざわざそれだけの事を聞きに此処に来たわけじゃねーだろ…何の用だ。」 ギッ…と背もたれにその身を深く沈ませ… 長い脚を組みなおしながら信が目の前の仁を見上げる… すると仁の眉間に一瞬ピクッと皺が寄り―― 「御手洗 壮一(みたらいそういち)。」 「!?」 「…知っているな?」 「………」 「今更――“自分は昇竜会とは無関係”…なんて事は言うなよ?」 「………何が知りたい?」 仁にはもう既に―― 自分が昇竜会組長…久米 勝治郎と関りがある事を知られてしまっている以上… これ以上とぼけたところでもう無駄だと判断した信は 諦めて仁の質問に答える姿勢を見せる 「昨夜遅く…御手洗が黒狼会の若頭候補の一人…  松本 啓一(まつもとたかいち)と会っていたとのタレコミがあってな。」 「タレコミ…」 『ああ…昨日俺のところに  わざわざボイスチェンジャーを使った匿名のタレコミがあってな…  真意のほどはまだ定かではないが――俺が襲われる二日前に…  黒狼会の若頭候補の一人…松本 啓一(まつもとたかいち)と  昇竜会(ウチ)の副本部長である御手洗が  場所は言えないが何処かの料亭で密会をしていたらしいと…』 ―――確か親父のところにも――    御手洗に関するタレコミの電話があったと聞いたが…    同一人物の仕業か? 「―――で?」 「…捜査一課(ウチ)は加藤 修也(かとうしゅうや)の事件に関して…  当初二通りの説を元に裏付けを進めていた。  一つは敵対するヤクザによる見せしめとしての犯行…  そしてもう一つは黒狼会内部での序列争いによる犯行…」 「…それで?」 「だがそこにいくつもの有名ホテルを所有し――  更には昇竜会での実質№2でもある影のホテル王……御手洗 壮一が  容疑者の一人である松本 啓一と会っていたとのタレコミのお陰で――  事はそう…単純なものではなくなってな。  そこで“昇竜会組長である久米 勝治郎と関りのあるお前なら――”    松本と御手洗の関係について何か聞けるのではないかと思って此処に来た。」 「………」 「何か知ってることは?」 ―――冷静に考えろ…    仁は俺が“昇竜会の組長と関りがある事を知ってはいるが――”    俺が“昇竜会の若頭である事は知らない”ハズ…    だったら―― 「…悪いが……俺は“御手洗さん”とは数回…  “久米さん”のお屋敷で見かけた事がある程度で…  それ以上は――」 「………」 ―――誤魔化すに限る。 「…役に立てそうになくて悪いな。仁…」 「…」 「…仁?」 「………そうか。」 「………」 「…ところで――」 「…?」 「もうすぐ昼になるが…  今から二人で……何処かに食べに行かないか?」 「………」 「…駄目か?」 「………いや。  丁度俺も腹が減ってきたところだし……何か食べに行くか。何がいい?」 「だったらこの近くに美味い中華の店があるんだが――  そこに行くか。」 「分かった。」 そう言って信は席から立ち上がると―― ハンガーにかけていたコートを手に取り… 仁と二人で社長室を後にした…

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