3 / 102
第3話
「――ずいぶんと美味そうに妻の精液を飲むな。ガーシュイン王」
「当たり前だ。この世で一番愛している者の精液だ。愛おしくて仕方がない」
「『この世で一番愛している者』か……」
いつからいたのか? 革製の三角帽子を目深に被った獣人は、長い足を組み、右目に負った傷を歪ませながら笑った。
「愛だの恋だの、夢物語をよく真面目に語れるな。ガーシュイン王」
「夢物語などではないぞ。本当に人を愛せばすぐにわかることだ」
なぜかガーシュインの言葉に黙り込んだ男は、夫に愛され、まだ頬の赤いサナを見た。
「あんたも愛だの恋だの信じてるのか?」
「もちろん信じている。愛や恋は、この世で一番強い感情だと知っているからな。人生を大きく変えるほどに」
そう、サナは愛の力で勉学に励み、社交界では華として振る舞い、ヒトとして初めて王妃になったのだから。
サナは脇に置かれていた下衣を穿くと、呼吸を整えて三角帽の男……サーディアンを真っ直ぐ見つめた。澄んだエメラルドグリーンの瞳で。
そして燃えるように赤い髪をかき上げると、サナはこれまであったことをふっと思い出した。
ともだちにシェアしよう!