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第4話
サナはシングルマザーだった。
学術都市であるシントガイナで留学中のガーシュインと出会い、彼の猛アタックの末、二人は付き合うようになった。
本来ならヒトと獣人が付き合うなんて、許されることではないが、シントガイナには短期間の留学生も多く、短い遊びの恋愛を楽しむ者が大勢いた。
よって、ヒトと獣人が付き合うこともよくあり、シントガイナでサナとガーシュインは燃えるような恋をした。
しかし交際から数カ月後。
サナはガーシュインの子を妊娠していることがわかった。
こんなこと、前途明るい彼に言えるわけがない。
ヒトと獣人の……しかも、将来国王になる男の子どもを孕んだのだ。
サナは他国に逃げる計画を彼に知られないように進めると、最後の日に言ったのだ。
「さようなら」と。
これまでの飛びきりの笑顔で。
それ以来、サナはどんなに楽しいことや面白いことがあっても、笑えなくなってしまった。
我が子のリンディーを産んだ時さえ、感動の涙は零れたけれど、笑うことができなかった。
もともと笑うことが少ない性格だったので、笑えなくてもさほど困ることはなかった。
しかも、愛情を込めて『リンリン』と呼んでいる息子には、とても笑顔が素敵な養育係、ハルカ・ラファエルがついているので、リンリンは彼同様に笑顔が素敵な少年に育った。
リンリンは五歳だ。
とても感受性豊かで、聡明な子に育っている。
今もきっと、ハルカとともに甲板で遊んでいるはずだ。
サナは徐に腰からサーベルを抜くと、サーディアンの喉元に突きつけた。
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