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第6話

 カモメが飛び、イルカが弧を描いて跳ね、大きなクジラが潮を吹いた。    その様子にリンリンは興奮し、ガーシュインも感動し、サナも笑顔を浮かべていた。    しかしお忍びで、最小限の従者や侍女、料理人や警備兵を乗せていたことが不運の始まりだった。    可愛らしい白木の船の三倍はあるだろうという大きな黒い船が近づいてきて、わざとぶつかって来たかと思った瞬間に相手の船の船員がこちらに押し寄せてきた。    サナは腰からサーベルを抜き、ガシュインも牙と爪を出し、警備兵とともに戦い、こちらが優勢となった時だった。 「サナ~」    我が子の今にも泣き出しそうな声に、サナはそちらを振り返った。    警備兵が甲板から船内に連れて保護していたはずのリンリンが、倒れた警備兵の返り血を浴びながら、ひとりの海賊に抱き上げられていたのだ。 「よう、綺麗な兄ちゃん。腕は立つようだが、大事な息子の命が何よりも大事なんじゃねぇか?」  そう言って短剣をリンリンの喉元に突きつけた。 「やめろ!」

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