7 / 102

第7話

 革の三角帽を被った男は、ベソをかくリンリンにニヤリと笑った。右目にある傷を歪ませながら。 「さぁ、あんたらの船をもらおうか。従業員も警備兵も全部ひっくるめてな。ただし、変な動きを少しでもしてみろ。うちの殺し屋があんたらの息子を躊躇いなく殺す」 「くっ……」  そうしてサナやガーシュインが乗った白木の船は、サーディアン一団に乗っ取られることになったのだった。  しかし、団長であるサーディアンは「無駄な死は嫌いだ」と言い、サナの従者にも侍女にも紳士的に接し、今のところ警備兵以外殺された者はいない。  だが、リンリンの隣には常に愛らしい顔をした、若い獣人の青年が傍にいた。  見た目に反して彼が殺し屋なのだろう。腰には毒針の入った吹き矢が常にぶら下がっている。 「――で、どんな御用件なのかな? サーディアン船長」  部屋の中央に置かれた長椅子のソファーに深く腰掛けたガーシュインは、にっこりと笑みを浮かべた。 本来、敵の前では椅子に浅く座り、いつでも戦える準備をするものだが、あえてガーシュインは余裕を見せ、サーディアンに戦う意思はないと表している。 しかしサナは、サーベルをしまったあとでも、戦場での癖で敵を相手に椅子に座ることはできなかった。どんなに紳士的でも、この男は敵だ。

ともだちにシェアしよう!