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第9話
「ここでの生活も十年になるからな。そろそろ陸が恋しくなってきたんだよ」
「理由は本当にそれだけか?」
ガーシュインの金と青のオッドアイが、真っ直ぐサーディアンを見つめた。
月の光を閉じ込めたような金色の左目と、突き抜けるような青空の色をそのまま映したような左の目は、彼がセルディンティーナ王国の王であることを示している。
セルディンティーナ王国の長兄は必ず獣人で、ブラウンゴールドの鬣を持ち、金と青のオッドアイをしている。
ガーシュインから逃げて子育てしていたサナも、オッドアイのリンリンを連れていたことと、赤い髪にエメラルドグリーンという目立つ容姿から、セルディンティーナ王国の国境警備隊に見つかり、保護された。
そのオッドアイは、リンリンにもちゃんと受け継がれて、なぜか真っ直ぐ見つめられると嘘がつけなくなる。
真実しか口を出てこなくなるのだ。
黙り込んでいたサーディアンも、この瞳の力に勝てなくなったのか? 冷や汗をかきながらふいっと顔を逸らすと、席を立った。
「そ……そろそろ昼食の時間じゃねぇか? お二人さん。お先に食堂室で待ってるぜ」
そう言い残すと、肝心なことは何も言わずに、サーディアンは二人が使っている客室を出ていってしまった。
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