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第11話
そんな海賊船に比べれば、この船は実に高貴で紳士的だった。
女性を強姦したり、暴力を振るったりするところは一度も見たことはないし、侍女にみな、『ミス』をつけて彼女たちを呼んでいた。
厨房は男性だらけだったので、特に女性が虐げられるような問題もなく、陽気なコック長が作る料理は、城で出される食事に引けを取らないほど美味しかった。
(不思議な船だ……)
サナがそう思うほど、この船の船員は礼儀正しく、船の隅々まで綺麗に清掃されていて、女性を大事に扱い、美味い料理とワインが出てくる安心安全な不思議な船だった。
しかし、一度戦えば船員は皆戦士となり、全力で襲い掛かってくる。
けれども、その戦い方も品があって、サナは最初、その品のある剣裁きから、貴族と戦っているのか? と錯覚を起こしたほどだ。
「――はぁ、今度はハルカ先生の番なのん!」
甲板から食堂室まで駆けてきたのか? 荒い息遣いのリンリンが、サナの隣に腰を下ろした。
「『ネズミさんどこ行った?』ゲームは一旦終わりですのん。お昼ご飯を食べたら、本を読んでお昼寝しますのよ」
「えーっ! もっと遊んでいたい~」
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