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第14話

 そしてフォークが手からカランと離れ、完全に落ちたところで、ハルカがささっとリンリンの手と顔を拭き、サナは彼を抱き上げた。 「ちょっとリンリンをベッドに寝かしつけてくる」 「右に同じなのん!」  ハルカが半分冗談交じりに敬礼すると、この場を仕切っているサーディアンが笑いながら、「いいだろう」と許可を出した。  そして先ほど、サーディアンとひと悶着あった客室へ、リンリンを連れて行く。その後ろを楽しそうにハルカがスキップしながらついてきた。  そうして入った寝室は、この船の中で一番豪華な客室だった。  それはガーシュインが一国の王であることに対する敬意であり、サーディアンの最上級の気遣いだった。  春の庭をイメージした美しい壁画が描かれた壁に、立派な樫の木でできた机と椅子。そして部屋の中央にはゴブラン織りの黄色い薔薇を描いたソファーセットまであった。  その部屋の、天蓋付きベッドの中央に、リンリンを寝かせた。  そうっと起きないように。  ベッドに降ろした直後は何かむにゃむにゃ言っていたけれど、すぐにすやすやと寝息を立て始めた。 「これで昼寝をさせる手間が省けたな」 「はいですのん」  ミルクティー色の巻き毛に、美しい若草色の瞳を持った、愛らしくも美しい顔立ちをしたハルカは、オメガの男性で、もとは貧しかった頃の保育所の先生だった。

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