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第16話
しばらく二人で、夢の国で遊んでいるリンリンを可愛い寝顔を眺めていたが、早く戻らないと、自分たちの昼食がなくなると気づき、自国の警備兵にその場を頼むと、急いで食堂へ戻った。
すると気のいい料理長は、二人の食事も残しておいてくれて、なんとか昼食にありつけたのだった。
***
海賊に拿捕されたのは、旅行に出て二日目のことだった。
まるで白木の船が行く航路を知っていたかのように追いかけて来て、リンリンが船に乗っていることを知っているかのように、人質に取った。
そうなれば、セルディンティーナ王国側は一切手が出せず、捉えられてしまったのだ。
(なぜだろう? なぜ、サーディアンの船は、俺たちの航路を知っていた?)
甲板の真ん中に置かれた、水の入った樽の上に座りながら、サナは一所懸命考えた。
じぶんとガーシュインに敵が多いことは重々承知していた。
この世界では、ヒトの解放や地位向上を訴えて活動する慈善団体や、獣人たちで作った『ヒトの人権を守る会』などがたくさんある。
これまでのヒトの扱いがあまりにもひどかったので、地位を向上させようと皆頑張っているのだ。
しかし、生まれながらにして貴族である獣人は、ヒトと仲良くするガーシュインのような者もいるけれど、ほとんどがヒトを見下している。そういう教育を受けているからだ。
そんな世界で、サナは初めて獣人の国王の妃となり、貴族となり、そして国民から絶大な支持を受けた。
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