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第19話
そんな背中を見送りながら、サナは彼の身体に沁み込んだ火薬の匂い気づいていた。
爽やかな香水では消し去ることのできない戦場の匂い。
いやというほどサナが嗅いできた匂いだ。
サナは樽を蹴るようにして飛び降りると、全速力で船内を駆けまわった。
ある男……愛しいガーシュインを求めて。
「――ガーシュイン!」
愛しい男は船内三階にある図書室にいた。
「どうしたサナ? そんなに血相を変えて」
「大好きだ!」
大きな身体に言葉とともに飛び込めば、海賊船には珍しい図書室いたガーシュインは、サナを強く抱き締め返してくれた。
「愛してるガーシュイン。キスして、息もできないぐら……んっ……」
戦場にいた頃のことを思い出すと、とてつもなく不安になる。
ガーシュインに再会するまで、そんなことは一度もなかったのに……。
「は……っ、あぁ……んん……っ」
自分の要求通りに深く口づけてくれる男か愛しい。
(俺は、弱くなっている……)
サナは自覚していた。
心も身体能力も落ちている。
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