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第20話

 もともと身体能力は高すぎるほどなのだが、自分の身体能力が落ちていなければ、あの日リンリンをサーディアンに奪われることは決してなかった。  その前にサーディアンを切り殺していた。  あと三センチだけサーベルが長ければ、サーディアンの喉を掻っ切ることができたのに。 「願いだ、ガーシュイン。抱いてくれ。今、ここで……」 「ここでか!?」  ガーシュインの絹のタイを解き、釦を外して、彼の高級な毛布のような毛並みに顔を埋める。  そして自らキュロットを脱いで、椅子に座る彼に跨れば、呆れたような、諦めたようなため息が聞こえた。 「だめだ」 「どうし……て?」  これまで、自分の求愛をすべて呑んでくれた男に、サナは泣きそうになった。どうして唯一の我が儘を聞いてくれなくなったのか? と。  すると、横抱きに抱え上げられ、同じ階にある、使われていない客室に連れていかれた。  使われていないといっても、いつでも使えるように清掃してあった、  この船には、珍しく品の良い侍女たちも乗っていて、清掃は隅々にまで行き届いていた。 「お前が乱れる美しい姿を、あんなところで誰かに見られたら、俺が腹ただしい」 「ガーシュイン……」  照れたようにそっぽを向いて言ったガーシュインは、サナをベッドに降ろすと、自らのキュロットの前立てを寛げた。  途端に、赤黒く光る雄が雄々しく反り立って飛び出てきた。  ガーシュインもサナと同じぐらい愛しい妻が欲しかったのだ。 「あぁ……ガーシュイン……」    サナはそれにむしゃぶりつくように唇を這わせた。 「……お前は本当に、それが上手いな……」    かき混ぜるように赤毛を撫でられて、サナの官能はさらに燃え上がった。  口することを上手いと好きな男に褒められて、嬉しいことはこれ以上ない。

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