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第21話
サナは必死にガーシュインの熱に舌を絡めると、雄の香りを味わいながら、先走る汁を啜った。
「あぁ……サナ……」
ガーシュインだってわかっている。
サナが、こうして激しく自分を求める時は、心が酷く乱れている時だと。
平静時のサナは、緑色の瞳も穏やかで、何を考えているのかわからない冷静な顔つきをしている。
そして、少しからかえば頬をふくらませ、ぷいっとそっぽを向いてしまう、シャイな青年なのだ。可愛いほどに。
そんな青年が自ら相手の服を脱がせ、自ら肌を晒し、こんなにも強く夫を求めて来る――。
「どうした、サナ……一体何があった?」
赤毛を優しく掴んで顔を上向かせると、サナは言いたくないとばかりに首を横に振った。
「別に……急にお前が欲しくなっただけだ」
「こんな昼間から?」
「お前を求めるのに、時間なんて関係ない」
そう言って、再び夫の股間に顔を埋めたサナは、怒ったような泣きたいような表情をしていた。
(また戦場でのことを思い出したのか……)
ガーシュインは覚った。
強く、逞しく、美しいほど孤高なサナが、そんな気弱な表情を見せるのは、戦場での記憶を思い出した時だけだからだ。
実は、サナは人生の『経験』というものが少ない。
たった23年の人生の中で、彼は12年を家族のためにすべて費やし、4年間を過酷な戦場で
過ごし、残りの人生はリンリンを育てるために充ててきた。
本当に彼が自分らしく青春を謳歌したのは、学術都市のセントガイナで衛兵として過ごしていた1年間しかないのだ。
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