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第24話

 いつも冷静な彼がここまで平静を失うということは、よほど心配しているからだろう。  彼は国王一族に忠誠を誓って、32歳になるこの年まで結婚をしていない。  自分の人生は国王一族のためにあると言って、整った容姿を無駄にするように、いくつもの結婚話を断ってきたのだ。 「漁業組合の力を借りるのは前提として、どうサーディアン一団を倒すか? だな」  国境警備隊隊長のジョセフィン・フォルドが、難しい顔で腕を組んだ。 「しかし漁業組合の者たちは一般市民だ。絶対に怪我人や死者を出すことは許されない」 「そうだな……」  ロイの言葉に、ジョセフィンは天を仰いだ。 「我が海軍が非力でじつに申し訳ない……」  呟くように俯いたのは、海軍兼空軍隊長のアーノルド・モイだった。 『兼』という字が付いていることから、セルディンティーナ王国の海と空が、これまでどれだけ平和だったか? 知ることができるだろう。  それほどまでに、これまで平和で穏やかな海と空を、セルディンティーナ王国は手にしていたのだ。 実は幸いなことだったと知らずに――。 こうして軍部の各隊長と、一部の臣下で開かれた会議は3時間を越え、一旦解散となった。 人数が少なく攻撃力は弱くても、セルディンティーナ王国の海軍は優秀だった。 小型の密偵船は何度も補給を受けながら、サーディアン一団の船を見張り続けている。

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