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第26話
これは現実なのだ。
悪い夢なら早く覚めてくれと何度願ったか知れない。
しかも金品の要求など、まだ一度もされていないので、何が目的で兄家族が捕まっているのか? 国軍もニーナたちも知らない……というか、まったくわからない。
国土の半分をよこせと、兄がリンリンの命と引き換えに迫られていることに。
「――ニーナ、マリアンヌ様のご様子はどうだい?」
与えられた客室で待っていたカルムは、部屋にやって来た彼女に心配そうに駆け寄った。
「今は鎮静剤で眠っているわ」
「そうか……」
カルムは安堵したように息をつき、鬣をかき上げながらソファーに座った。
そして向かいにニーナが腰を下ろしたタイミングで、侍女が目の前に用意されたカップに、美しい茜色の紅茶を注いだ。
紅茶の水面に、ニーナの愛らしい顔が写る。
それをぼんやりと眺めながら、ニーナは兄家族たちのことを考えていた。
もともとカルムはサナに惚れていて、突然フィーゴ王国からセルディンティーナ王国へ引っ越した彼ら親子を追いかけて、この城の騎士団に入団した。
そんな彼がガーシュインとサナの仲を邪魔をしないように、ニーナは妹として気を使い、カルムに勉強を教わると嘘をついて、彼を呼び出しては一緒にいる時間を作った。
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