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第29話

 はぁ……と深いため息をつきながら、カルムは一口紅茶を飲んだ。  ぬるくなった紅茶は、冴えない頭をさらに鈍らせる気がした。 (サナたちを救い出す良い手立てはないのか……?)  カルムもまた、己の非力さを痛感していた。  サナ親子とは繋がりも深い。  リンリンがまだおむつを穿いている頃から、カルムはサナ親子を知っていたし、夜勤で忙しかったサナを助けられればと、何度もリンリンの世話をした。  そんな身内のようなサナ親子を……国王一家を、カルムもまた救い出そうと頭を捻らせたのだった。  城内が重く張り詰めた空気に包まれている時、サーディアン一団の船内では、『ネズミさんどこ行った?』ゲームでてんやわんやになっていた。  これはネズミと駆除係に別れ、駆除係に捕まるとネズミは駆除係となり、今度はネズミを狩る側に変わる。そして最終的にネズミを一匹残らず駆除すれば、終了となるゲームだった。  この遊びを、 「お船の中にいる海賊さん、みんなとやりたいですのん!」  と可愛いリンリンが言い出したので、サーディアンも三角帽を押さえながら、船内を駆け回っていた。 「……よくやるな」 「ほんとですのん。国王様もリョウジも、一緒になってネズミになってましたのん」  サナとハルカは、甲板の一番良い場所に設けられたテーブルに着き、呑気に紅茶を飲んでいた。

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