29 / 102
第29話
はぁ……と深いため息をつきながら、カルムは一口紅茶を飲んだ。
ぬるくなった紅茶は、冴えない頭をさらに鈍らせる気がした。
(サナたちを救い出す良い手立てはないのか……?)
カルムもまた、己の非力さを痛感していた。
サナ親子とは繋がりも深い。
リンリンがまだおむつを穿いている頃から、カルムはサナ親子を知っていたし、夜勤で忙しかったサナを助けられればと、何度もリンリンの世話をした。
そんな身内のようなサナ親子を……国王一家を、カルムもまた救い出そうと頭を捻らせたのだった。
城内が重く張り詰めた空気に包まれている時、サーディアン一団の船内では、『ネズミさんどこ行った?』ゲームでてんやわんやになっていた。
これはネズミと駆除係に別れ、駆除係に捕まるとネズミは駆除係となり、今度はネズミを狩る側に変わる。そして最終的にネズミを一匹残らず駆除すれば、終了となるゲームだった。
この遊びを、
「お船の中にいる海賊さん、みんなとやりたいですのん!」
と可愛いリンリンが言い出したので、サーディアンも三角帽を押さえながら、船内を駆け回っていた。
「……よくやるな」
「ほんとですのん。国王様もリョウジも、一緒になってネズミになってましたのん」
サナとハルカは、甲板の一番良い場所に設けられたテーブルに着き、呑気に紅茶を飲んでいた。
ともだちにシェアしよう!