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第30話
紅茶は、茶葉に詳しいという団員が配合してくれたもので、ほんのりとジャスミンの香りがして、とても美味しかった。
「こんな品のある茶葉を積んでる海賊船なんて、めずらしいと思いますのん……」
ハルカも同じ感想を抱いたようで、美しい花柄のカップに注がれた琥珀色の液体を見つめていた。
「そうだな。まるで一流の貴族が飲むような高級茶葉だ。しかもこの船にはソムリエまでいる。ワインも一流どこばかりだ」
「ソムリエが乗ってる海賊船も珍しいですのん。しかも無理やり働かされている感がないんだわ。仕事に誇りを持っているっていう感じなのん」
「確かに。あのソムリエも、過去に乗っ取った船から連れてこられたのか? それとも自らの意思で、この船に留まっているのか……判断が難しいな」
「はいですのん……」
サナとハルカがのんびりとお茶を飲んでいる脇では、なおも船員たちによる『ネズミさんどこ行った?』ゲームが続けられ、へとへとになったらしいサーディアンが、サナの隣にどっかりと腰を下ろした。
「いやー、久しぶりに走った走った。お宅の息子は俊敏な上に足が速いな。もう何度も捕まえられたよ」
「どうやら運動神経は俺に似たらしい。リンリンはやたらと足が速いんだ」
「そうなんですのよ。だからハルカちゃんはいっつも捕まっちゃいますのん」
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