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第31話
自分たちは人質のはずなのに、こんな風に丁重な扱いを受け、しかも船員みんなで子どもの遊びに付き合ってくれる。
海賊船での戦いも知っているサナは、本当にこの海賊船が不思議でたまらなかった。
サナが乗っていた海賊船はもっと汚くて、男臭くて、自ら船を見つけては戦いに挑んでいくような、血の気の多い男たちが多かった。
しかし、この船は『子どもが乗っている間は、他の船は襲わない』と言い、今のところ他の船を見つけても攻撃することはない。
むしろ避けるような航路を取ることもある。
(こんな呑気な海賊船があっていいのだろうか……)
サーディアンのもとにもカップアンドソーサーが運ばれ、喉が渇いているだろうからと、あえて温めの紅茶がたっぷりと注がれた。
「それとな、あんたんとこの旦那は爪が伸びすぎだ。捕まえられると痛くてたまらん」
「この船に乗ってから爪を研いでいないからな」
「なぜ?」
サーディアンは、文字通り首を傾げた。
「ガーシュインは自分専用の爪とぎを職人に作らせているんだ。遺伝なのかなんなのかわからんが、セルディンティーナの王は通常の獣人より爪が硬くてな。専用の爪とぎでしか爪が研げないんだよ」
サナの返答に、紅茶を一気に飲み干したサーディアンが再び問うた。
「その専用の爪とぎってのは、白木の船にはあるのか?」
「もちろん。長期の外出の時は持ち歩いている」
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