33 / 102

第33話

「あんただって目的があって王妃になったはずだ。そうだろう?」 「あぁ」 「俺は船員たちに住む家を与えたい。この船で働いている者にも住居と安定した収入を与えたい。だから国王になりたいんだよ」 「国王にならなくても、住む場所は手に入れられるんじゃないか? ガーシュインにそう交渉すればいい。あいつは心が狭い王ではないぞ?」  サナの素直な言葉に、サーディアンは声を上げて笑った。 「馬鹿言え。俺たちがどれだけの罪を重ねてきたと思う? いくつの船を沈めてきた? さすがのガーシュインだって、俺たちが陸に戻れば、何らかの処罰を与えざるを得ないだろう。俺が国王だったら、お尋ね者の海賊団なんて、国内には住まわせないけどな」  海賊王と呼ばれるには至極真っ当な言葉を残し、彼は再び微笑むと、ひらひらと手を振りながら船内に戻って行った。  これからワインで喉を潤し、眠りにでもつくのかもしれない。  リンリンの遊びに付き合って、彼は散々走り回っていた。  だから今は疲れているはずだ。 (寝た隙に奴の首を刎ねるか……?)  一瞬サナは思いかけたが、リンリンの後ろを着いて回る吹き矢の少年が目の端に入って、諦めた。  サーディアンの首を刎ねようものなら、報復として毒針がすぐさまリンリンを襲うだろう。

ともだちにシェアしよう!