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第33話
「あんただって目的があって王妃になったはずだ。そうだろう?」
「あぁ」
「俺は船員たちに住む家を与えたい。この船で働いている者にも住居と安定した収入を与えたい。だから国王になりたいんだよ」
「国王にならなくても、住む場所は手に入れられるんじゃないか? ガーシュインにそう交渉すればいい。あいつは心が狭い王ではないぞ?」
サナの素直な言葉に、サーディアンは声を上げて笑った。
「馬鹿言え。俺たちがどれだけの罪を重ねてきたと思う? いくつの船を沈めてきた? さすがのガーシュインだって、俺たちが陸に戻れば、何らかの処罰を与えざるを得ないだろう。俺が国王だったら、お尋ね者の海賊団なんて、国内には住まわせないけどな」
海賊王と呼ばれるには至極真っ当な言葉を残し、彼は再び微笑むと、ひらひらと手を振りながら船内に戻って行った。
これからワインで喉を潤し、眠りにでもつくのかもしれない。
リンリンの遊びに付き合って、彼は散々走り回っていた。
だから今は疲れているはずだ。
(寝た隙に奴の首を刎ねるか……?)
一瞬サナは思いかけたが、リンリンの後ろを着いて回る吹き矢の少年が目の端に入って、諦めた。
サーディアンの首を刎ねようものなら、報復として毒針がすぐさまリンリンを襲うだろう。
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