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第34話

「お船に戻してくださるなんて、本当かしらん……?」  小さなハルカの呟きに、サナの意識は現実に引き戻された。 「さぁな。あいつは有言実行の男だ。それだけは信用できる。案外本気で一旦船に返してもらえるのかもしれないぞ。ひとりにつき、何人もの見張りがつくだろうがな……」  サナは席を立つと、甲板を走り回るリンリンを走って捕まえた。  最近リンリンはますます足が速くなって、サナでも捕まえるのに苦労するようになった。 「さぁ、リンリン。お昼寝の時間だ。汗を流してベッドに入るぞ」 「いやーんですのん! リンリン、もっと遊びたいんだわーっ!」  じたばたと暴れるリンリンを肩に担ぎ、「ゲームは終わりだ。リンリンは昼寝するぞ!」とサナが叫ぶと、船員たちは皆その場にへたり込んだ。 『楽しかった』と笑う者もいれば、汗だくになって疲労の色を浮かべている者もいる。 しかし最近では、剣を振るっていなかった海賊たちには良い運動になったようで、みなのストレスも発散されたように見えた。 「いやぁ、リンリン坊ちゃんは元気の塊だな」 「本当に。あの元気はどこから生まれてくるんだろうな。俺はもう四十路も過ぎてるから、大変だったぜ」  そんな会話も聞こえ、サナは心の中で笑った。  海賊もやはり、息する生命体なのだな……と。 (そういえば……)  そう、そういえばこの船の船員はみな……。 (どうして今まで気づかなかったんだ!?)  このことに、なぜサナは気づかなかったのだろう! と髪を掻き毟りたくなった。

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