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第36話

「そうか。で、ガーシュインとリョウジはどう思った?」  二人の顔を交互に見ると、ガーシュインに目線で促され、リョウジが先に口を開いた。 「俺は疑う目を忘れずに、この話には乗ってもいいと思います。船内には使い慣れた医療器具も残してきたままなので……」 「俺も同意見だ。気は抜かない。しかし、いい加減爪も研ぎたいしな。じゃないとリンリンやサナを傷つけてしまう」 「そうだな……」  爪のことは、ガーシュイン自身も気になっていたらしい。  サナもリンリンがお気に入りのぬいぐるみ、羊の『ランラン』を持ってきたかった。  このぬいぐるみがないせいで、お昼寝を渋ったり、ぐずる回数が増えたと考えていたからだ。  明るく無邪気な彼だが、リンリンはリンリンなりに、ストレスを感じているのかもしれない。 「それじゃあサーディアンに、一度我が船に戻してもらえるよう、交渉してこよう」  決まったのなら早い方がいい……と、ガーシュインが席を立とうとした時だった。  本題を思い出し、サナは彼のシャツの裾を掴んだ。 「あともうひとつ! 大事な話があるんだ!」 「一体なんだ?」  怪訝な顔をしながら、ガーシュインは再び椅子に腰を下ろした。 「どうして俺は『このこと』に気づかなかったんだろうって、今は苛立っている」

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