サナの言葉に、リョウジもハルカも身を乗り出してきた。 「なぁ、みんな。この船には海賊船として不自然なところが多々ある。しかし一番不自然なのは……」 　ごくんと唾を飲み込むと、サナはずっと感じていた違和感の正体を、3人に小さな声で話したのだった。 ＊＊＊ 　実母であるマリアンヌが好きな薔薇の花を花瓶に入れ、ニーナはそっと彼女のベッドサイドテーブルに置いた。 「……あぁ、瑞々しくて……素敵な紅茶のような香りがするわ。薔薇の花を……新しく変えてくれたのね」 　弱々しいマリアンヌの声に、ニーナの胸の奥がズキンと痛んだ。 　享楽家で、いつまでも少女のように無邪気だった彼女が、ここまで心を病んで倒れたことはない。 　ヒトの人権を守るといった、いかにも正当化された狂気を持った者に、マリアンヌは襲われたことがある。 　その時、サナが身を呈して守ってくれたおかげで、マリアンヌは掠り傷ひとつ負わなかった。 　しかし、サナは背中を20針も縫う大怪我を負い、生死の境を彷徨った。 　この時も、マリアンヌはショックから寝込むと思っていたのだが、一度も寝込むことなかった。 　熱がなかなか下がらないサナに付きっ切りで看病し、水を飲ませ、意識がほんの少し戻った時に重湯を口に運んだ。 　そして看護師から必死に看病の仕方を教わりながら、甲斐甲斐しくサナに尽くしていた。