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第43話
「自分たちが捕虜だということを忘れるな。自由は与えても権利は与えん――よく覚えておけ」
席を立つと、サナの耳元で囁いたサーディアンは、睨みつける緑色の瞳に口角を上げた。
そうしていつものように飄々と部屋を出ていくと、サナは急いでリンリンを抱き締めた。
「大丈夫だったか? リンリン! どこも怪我してないか?」
「おーいえー! リンリンはどこも怪我なんてしてませんのよ。いつも通り元気なんだわ」
「そうか、よかった……」
リンリンの背中を擦ると、サナはやっと生きた心地で息を吐き出した。
「どんなにお話が聞きたくても、遊びたくても、サーディアンとは二人きりになってはいけない。わかったな、リンリン」
少し語気を強めて言うと、リンリンはわからないといった風に首を傾げた。
「どうしてですのん? サーディアンはとってもリンリンに優しいんだわ」
「優しくても、あいつはいくつも船を沈めてきた海賊だ。正義の使者とは違う」
小さな両肩を掴み、サナはリンリンのオッドアイを見つめながら言い聞かせる。
「海賊さんは悪い人ですのん?」
「少なくとも多くのヒトや獣人を殺してきた」
「でも、それは『生きるため』ってことじゃないかしらん?」
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