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第44話

「そんな難しいこと……誰から聞いた?」 「お父様ですのん。お城にいた時、お庭で飼っていた鶏さんを殺して食べてしまうのが、可哀想だって泣いた時、お父様に教わりましたのん。強者は『生きるため』に、弱きものを殺して食べるんだよ……って」 「確かにそれはそうだが……」 「この船の皆さんは、本当にみんな悪者ですのん? 『生きるため』に、弱きものを仕方なく殺してきたんじゃないのかしらん? ってリンリンは思いますのよ」 「リンリン……」  純粋な瞳で語る息子の言葉に、サナは一瞬口を噤んでしまった。  彼が言うことに、一理納得してしまったからだ。 「そうだな。例えサーディアン一団がそうだったとしても、今のリンリンは『捕虜』という弱い立場だ。いつ殺されて、お昼ご飯の材料にされるかわからないんだぞ?」 「お……っ、お昼ご飯の材料になるのは嫌ですのーん!!」  自らの身体を抱え、首をぶんぶんと左右に振った息子に、サナは優しく語りかける。 「お昼ご飯になりたくなかったら、絶対にハルカやお父様や俺のそばを離れるな。約束できるな?」 「はいですのん……」  半分べそをかいたリンリンと小指を絡ませ約束すると、サナはホッと息を吐き出した。  張り詰めていた緊張が、やっと解けた気がしたからだ。

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