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第45話
自分の身は自分で守ればいい。
サナはずっとそうして生きてきた。
そしてその術も知っている。
また、そういう場面にだって何度も遭遇し、何度も切り抜けてきた。
しかし、子どもを持ってから思うのは、他者を守ることの難しさだ。
リンリンがまだ赤ん坊だった頃。
ほんの少し目を離した隙に、ベビーベッドから落ちたことがある。
ベッドといっても、ソファーほどの低い高さだったのだが、それでも驚いたリンリンは泣き止まず、急いで医者へ連れて行ったことがあった。
結局掠り傷もなく、病院に着く頃にはご機嫌で、当時伸ばしていたサナの赤い髪を掴んだり、口に入れたりしては遊んでいた。
この時だって、心臓が止まる思いがしたのだ。
さきほどサーディアンと二人でいるリンリンを見た時、正直冷たい汗が背中を流れた。
そして大事な者を守る難しさを、また痛感した。
リンリンが成獣となり、自ら身を守れるようになるまでは、母親である自分が……そして父親であるガーシュインや養育係のハルカが彼を守っていかなければならない。
確かにこの船の一団はリンリンに友好的だ。
年老いた団員などは、孫を見る目でリンリンを可愛がり、異国の冒険譚などを聞かせてくれることもあった。
それは好奇心旺盛で想像力豊かなリンリンの良き刺激となるので、サナも一緒に話を聞いたりすることもある。
月の色をした金色の瞳と、空の色をした青い瞳が、キラキラと輝く様が大好きだからだ。
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