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第47話
そうして動きやすくてお気に入りの服や、これまた着慣れたパジャマ。リンリンが大好きなおもちゃなどを、侍女と相談しながら袋に詰めていった。
見張りの団員が目を光らせる中で。
特にリョウジは手術用のメスなど、危険物を持ち込むことを望んだので、団員たちからなかなか許可が下りず、説明が大変だったらしい。
こうして各々名々が必要最小限の物を持ち、名残惜しげに白木の船をあとにした。
するとサーディアンはそのまま白木の船のロープを外し、大海へと船を流してしまったのだ。
「何をする!! サーディアン!!」
赤髪が逆立つほど激昂したサナを、甲板の上でガーシュインが抱き締めた。
「落ち着け、サナ!」
「落ち着いていられるか!! あの船は……っ」
そう、あの白木の船は、サナとガーシュインの結婚後、新婚旅行へ行くために作られた船だった。
その船が……大切な思い出がたくさん詰まった船が流されたのだ。
この何も目印のない大海に。
すると、サーディアンは余裕の表情で口の端を上げた。
「安心しろよ、お妃様。俺たちの船は、ずっとあんたらの国の海兵隊に監視されている。白木の船だって、すぐに海兵隊が回収するさ」
「……っ!」
サナは彼の言葉に何も答えられなかった。
なぜなら自国の海兵隊がずっとこの海賊船を見張っていることは、サナも気づいていたからだ。
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