53 / 102
第54話
すると相手の動きがひどく遅く見えるようになって、サナは意のままに攻撃することができた。
そうして、どれだけの獣人やヒトを切り殺しただろうか?
これが罪深き行為だとわかっていながら、サナは戦う手を止めることはできなかった。
自分には守るべき相手がいる。
最愛の夫と息子だ。
二人を守るためだったら、自分は地獄に落ちてもかまわない。
その時、どんっと背中が何かにぶつかって、一瞬集中力が切れた。
「――相変わらず、お前は強いな! サナ!」
「ガーシュイン!」
夫と背中を預け合い、会話を交わす。
「船内に敵は?」
「侵入していない様子だ。むしろこっちの戦力に怯んで後退している」
確かに、最前列で戦っていた者のほとんどが倒れ、最後列にいた者たちが、自分たちの船に戻っていく姿が見えた。
この様子に、サーディアンが発破をかける。
「俺たちの目的はシャークノーズ一団の殲滅だ! 相手の船に乗り込め! 俺たちの船を襲ったことを後悔させろ!」
「おーっ!」
船同士がさらに距離を詰め、どぉんと大きな音を立ててぶつかり合う。
衝撃に身体が傾ぐと、ガーシュインに抱き留められた。
その温もりに安堵する暇もなく振り返ると、シャークノーズ一団は完全に敗戦状態だった。
ともだちにシェアしよう!