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第57話

「しかし……っ!」 『地獄の海賊団』と言われるサーディアンたちの戦い方とは、どこか違う気がした。  サナはそう思い語気を強めると、それに被せるように、「起きてきたからだよ」と彼は口の端を上げた。 「起きてきた?」 「あぁ、可愛いリンリン王子がお昼寝から起きてきたからな。オジサンたちは惨い所業を途中でやめたんだ」 「あ……」  彼の言葉に、サナはハッとした。  最奥の秘密部屋から出てきたリンリンは、そのあと一時間ほど寝室で眠り、起きてすぐに、 「海賊さん同士の戦いはどうなりましたのん!?」  と尻尾をぴんと立て、ぷるぷると震わせながら興奮していた。  自分の命も狙われていたというのに、この図太い神経は誰に似たのか? と、母親として考えながら、「どうしても甲板に行きたいですのん!」と、駄々を捏ねる彼に、戦場の惨さを見せるのも教育のひとつか……と考え、サナは彼と外へと続く階段を登った。  するとそこには死体など一体も転がっておらず、戦闘で流れた血や火薬の一粒もすべて海に流されていて、若い団員たちがデッキブラシで床を掃除していた。 「……いつもと何も変わらないですのん……」  思いっきりがっかりした様子のリンリンを抱き上げながら、サナは確かに何かがおかしいと思った。

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