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第58話

 たった一時間の間に、あの殺伐とした無残な光景から、平和な日常へと景色が変わっていたからだ。 (こんな戦場は知らない……)  そう思ったのだが、それはサーディアンの命令で、幼いリンリンが起きてくるまでに、戦闘のあとを一欠けらも残すことなく片付けろ! と、若い団員たちが命令されたのだとあとから知った。 「お前のような優しい男が、なぜ『地獄の海賊団』などと呼ばれているのか? 俺はまだわからない」  困惑しているサナの言葉に、サーディアンはおかしそうに声を上げて笑うと、葉巻に火をつけた。 「昔はヤンチャしてたからな。もちろん船だって何艘も沈めてきたし、捕虜だって数えきれないほど捕まえて、奴隷商に売ってきた。俺は絶対に天国になんか行けねぇ。『地獄の海賊団』って呼ばれることに誇りすら感じているよ」 「サーディアン……」  葉巻を吸う彼の姿を初めて見た。  サナはまだ興奮で震えが止まらないのだろう、彼の手を見つめていた。  きっとその興奮を鎮めるために、彼は葉巻を吸っているのだ。  戦場では葉巻なんて当たり前の持ち物で、まだ幼い戦士だったサナに勧めて来る者も多くいた。  精神状態を維持するために麻薬やコカインを吸う者もいて、戦いのあとに遠い目でぼんやり座り込む者もよく見かけた。  16歳になるまで戦場に身を置いていたサナにとって、それは当たり前で日常的な光景だったのをふっと思い出した。  それと同時に、ガーシュインと出会ってからの自分が、どれだけ幸せだったのか? サナは再確認した。

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