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第63話

 サナは久々に剣を握り、返り血を浴びたことで、まだ戦闘本能が休まっていないのだ。  ガーシュインだってそうだった。  心を静めたくて、愛しいサナを抱き締めようと船内を探していたら、サナはサーディアンと話し込んでいた。  そんな二人を見て、浮気を疑うほど心は狭くない。  それにサーディアンは葉巻を吸っていた。  見慣れない様子に、あれが彼の戦闘本能の休め方なのだろうと察した。  だからそっと立ち去った。  そしてサナを抱きしめる代わりに、風呂に入って汗を流したのだ。  ガーシュインは、常々サナは少しでもサーディアンのお気に入りになった方がいいと考えていた。  その方が、生きながらえるチャンスが増えるからだ。  どんなに丁重に扱われても、自分たちは捕虜だ。  情が移れば、惨いことはされないだろう。  処刑も免れるかもしれない。  そう考えて、二人の会話を途切れさせることはしなかった。 「サナ」  もう一度名前を呼ぶと、愛しい青年は頬を染めながら、そっと唇を寄せてきた。  そんなサナが可愛くて堪らなかった。  脳を突き抜けるほどの恋情が、一気に全身を駆け巡る。  サナの腰を抱き寄せて自分の膝の上に座らせると、ガーシュインは食べてしまいたいと思うほどの愛で口づけた。 「ん……っ」  ずっと待っていたこの感覚に、サナは涙が零れるほどの安堵を覚えた。

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