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第77話
それもそうだ。
ガーシュインが治めるセルデンティーナ王国は、実に平和そのものだからだ。
卓越した交渉術で、ガーシュインは剣を交えることなく、国同士の諍いを納めていた。
だからサナもリンリンもマリアンヌも、穏やかな幸せを謳歌することができるのだ。
意識を失うほど、ガーシュインに激しく抱かれたサナは、気がついた時には寝室のベッドで眠っていた。
こんな風に抱き潰されたのも久しぶりだ……と思いながら、サナは風呂に入り、新しいブラウスを羽織った。
すると寝室の扉をノックされ、「どうぞ」と気だるく応えると、ハルカとリンリンが部屋に入ってきた。
「2人とも、もう気持ちは落ち着いたか?」
柔らかな表情を浮かべて訊ねると、ハルカは満面の笑みでガッツポーズをした。
「おーいえー! ハルカちゃんはたくさんお肉を食べたら、気持ちが落ち着きましたのん!! やっぱりこういう時は、血の滴るステーキを食べるに限りますのん!!」
「そうか、それは美味そうだな」
サーディアンは葉巻。
ガーシュインとサナはセックス。
そしてハルカは、血の滴るレアステーキ。
みな興奮を治める方法は様々だな……と思い、サナは心の中で笑った。
「サナ〜!!」
「リンリン、ハルカと一緒にステーキを食べてきたのか?」
足元までかけてきた我が子を抱き上げながら、サナは今度は本物の笑みを浮かべた。
「どうしてわかったんですのん?」
きょとんとした顔で小首を傾げたリンリンに、サナは少し意地悪に言う。
「口元に美味しそうなソースが着いている。このままリンリンも食べてしまおうか?」
「い、嫌ですのーん!! リンリンのことは、食べちゃダメですのーん!!」
そう言いながら、リンリンは両手で口元をゴシゴシと拭った。
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