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第78話
「ほら、まだここにもついてる」
サナはリンリンの頬についたソースを、ぺろりと舐め取ってやった。
するとリンリンはくすぐったそうに肩を竦め、えへへと可愛い笑顔を浮かべた。
獣人は、相手に舐められたり相手を舐めることが好きだ。
猫が毛繕いする感覚なのだろう。
しかし、サナには残念ながらザラザラした舌がないので、リンリンの毛繕いをしてやることができない。
ガーシュインは愛情を表すために、よくリンリンの毛繕いをしてやっている。
するとリンリンは気持ち良さそうに、そして時にはくすぐったそうにして父親に甘えるのだ。
サナはいつもこの光景を見て、ホッとする。
もし自分ひとりで今でも息子を育てていたら、立派な獣人として生まれてきたリンリンに、
『毛繕い』という獣人同士の大事なコミュニケーションの取り方を、教えてやれなかったからだ。
それ以外にも、爪とぎの仕方も教えてやることができなかった。
だからリンリンがもっと幼い頃は、サナが爪切りで彼の爪を切っていたのだ。
しかし大きくなるにつれて、本能なのか? リンリンは自然と爪とぎを覚えていった。
それは良かったのだが、家の柱やソファーで爪とぎをするようになったので、サナは慌てて雑貨店へ行き、爪とぎ用の小さな丸太を買って来て、リンリンに与えた。
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