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第82話
「本当に不思議だと思わないか? この船にはこんなに大勢の者が乗っているのに、ヒトはサナとハルカとリョウジだけなんだぞ?」
「ヒトは三人だけですのん?」
「そうだ。普通の海賊船にはヒトしか乗っていない。荒くれ者やお尋ね者。賊にまで身を落とした大勢のヒトが乗っているのものだ。獣人なんてほんのひと握りで、獣人が乗っていない海賊船の方が多いぐらいだ。それなのに、この船は俺たち三人以外、みんな獣人なんだぞ」
優しく語るサナに、リンリンはなおもキョトンとしていたので、ハルカが助け舟を出してくれた。
「早い話が、貴族であるはずの獣人しか、この海賊船には乗っていないってことですのん」
「貴族である獣人しか、乗っていない海賊船……ってことは、この船は貴族の船ですのん?」
リンリンは本当に頭がいい……と我が子ながら感心しつつ、サナは大きく頷いた。
「大きな声では言えないがな。きっとこの海賊船は、元貴族の船だったんだろう」
「じゃあ、サーディアンも貴族なんですのん?」
首を傾げたリンリンの頭を、どこからともなく現れたガーシュインがグリグリと撫でた。
「本当に我が息子は賢い。五歳でここまで理解できれば、俺の臣下もうかうかしてられないな」
「ガーシュイン。どこから話を聞いていた?」
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