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第83話

「ん? 『貴族である獣人しか乗っていない海賊船』って話をしていたあたりかな?」 「そうか」 「でもな、リンリン。このことはまだ誰にも内緒だ。お父様以外の獣人には、決して話してはいけないと約束できるか?」  オッドアイで真っ直ぐ息子の目を覗き込んだガーシュインに、リンリンは大きく頷いた。 「わかりましたのん。リンリン、頑張って口の堅い男になるんだわ!」 「素晴らしいですのん! 口の堅い男はモテるんだわ」 「そうですのん? ハルカ先生」 「そうですのよ! もうこれで、リンリンはさらにモテモテになっちゃうんだわ!」  そう言ってリンリンの短い両腕を掴むと、くるくると回り出したハルカに、彼もキャッキャと笑い出した。 「さて。あとはどうやって、真実をサーディアンの口から聞かせてもらうか……だな」 「そうだな」  ガーシュインの言葉に同調すると、強い向かい風の中を、一匹の赤味がかった鷹が飛んでいるのが見えた。 「あの電書鷹は、我が国の鷹ではないな……」 「確かに。我が国で使っている電書鷹とは毛色が違うな」  驚きに瞬くサナに、ガーシュインも首肯する。 「これも何か理由がありそうだな」 「そうだな」  不思議だらけの船に、サナもガーシュインも厳しい表情を崩さなかったのだった。

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