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第84話
第四章:真実の扉
拿捕されていた船が、セルディンティーナ王国の海軍に回収されたと一報が入ったのは、翌日になってからだった。
海軍が使っている電書鷹が必死に空を飛び、この報をもたらしてくれたのだ。
しかし残念なことに、船の中には誰一人として乗っておらず、国王をはじめとする人質は助けることができなかった。
「お兄様……」
海軍兼空軍隊長のアーノルドから話を聞かされて、ニーナは静かに自室の椅子から立ち上がった。そして窓に近づくと、兄が大好きだったバラ園を眺める。
兄は学生の頃、留学先のシントガイナから帰ってくると、とても憔悴した様子でこのバラ園を庭師に作らせた。
「どうしてバラを植えたの?」とニーナが訊ねた時、
「世界で一番愛したヒトは、生き方も姿も凛としたバラのように美しかったからだよ」
と、教えてくれた。
「サナ……」
今思えば、そのヒトはサナのことだったのだろう。
ニーナは初めてサナに会った時、確かにその凛とした佇まいと華やかな容姿が、バラのようだと思った。
「船は回収できたけれど、捕まっているお兄様たちは、まだ元気なのよね?」
振り返りアーノルドに訊ねると、彼は大きく頷いた。
「はい。国王様たちは甲板で紅茶を嗜んだり、リンディー様と戯れたりと、お元気な様子です」
「そう、それはよかったわ」
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