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第86話
その分、今回のことにも心を痛めていて、人質として捕らえられてしまったガーシュインたちのことを、とても心配していた。
そしてまた、何もできない自分にも歯がゆさを感じているようだった。
「――ねぇ、カルム。私と一緒に船旅に出ましょうか?」
その言葉は、するりとニーナの口から自然と出てきた。
「えっ?」
「何でもないただの船旅よ。ただ海へ出て、その広大さに心を洗ってもらうだけ」
「ニーナ……それって……!?」
恋人がいると、こんなにも心強いものなのかとニーナは心の底から思った。カルムがいてくれるのなら、自分は羽が生えたように自由で、そして強くなることができる。
「一緒に行ってくれるわよね? カルム」
明るい陽射しが差し込む廊下で、多くの侍女を従えながら微笑むと、これまた多くの従者を従えたカルムが、すべてを包み込むように笑みを浮かべてくれた。
「もちろん。ニーナとの船旅なんて、とてもスリリングで楽しそうだ」
「そうと決まれば、善は急げですわ。海軍兼空軍隊長に、たくさんの武器を詰め込んだ護衛船を手配してもらわなくては」
ニーナはとても強い女性だった。
普段はふんわりと咲く、野の花のような慎ましさとおおらかさを持っているが、いざとなればどんな危険な地へも赴く。
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