87 / 102
第88話
しかもサナは、先日。
強い海風の中を、低空飛行で必死に飛んでいる赤い電書鷹を、こっそりと捕まえていた。
腕を差し伸べたら、彼が自らサナの腕に停まってきたのだ。
調教はされているのだろうが、強風の中、必死に飛んできてよほど疲れていたのだろう。
赤い鷹はホッとため息でもつくように、サナの腕の上でくつろぎだした。
その時、サナはこれ幸いと電書鷹が足首に着けている手紙を、拝見させていただいた。
きっとどこかの国と軍事的なやり取りでもしているのだろう……と、勝手に思っていたのだが、手紙の内容はまったく違うもので、サナを驚かせた。
(これで謎の扉はすべて開いたな)
そう思って、電書鷹の一件をガーシュインに話すと、彼もまた驚き、そして複雑な表情をしていた。
「だから、サーディアンは国の半分をよこせ」と言っていたのかと……。
サーディアンは一瞬目付きを鋭くして、ガーシュインと席の離れたサナを見たが、傷のある右目でウィンクすると、
「ちょうどいい。俺もあんたたちに、そろそろ国の半分を明け渡してもらいたいと思っていたからな。ゆっくり話がしたいと思っていたんだ」
と、グラスの中の赤ワインを飲み干した。
「それじゃあ、今夜9時にそなたの部屋を訪ねよう」
「いや、その必要はない。せっかくならワインやつまみを楽しみながら、食堂室で話そう。その方がお互い対等でいいだろう?」
ともだちにシェアしよう!