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第90話

「それはいつでも、国王様御一家をお守りすることができるようにするためですのん! リョウジも好物のコロッケばかり食べていないで、ステーキを食べるといいんだわ!」  この言葉に珍しくサナが吹き出した。  するとガーシュインが目を細め、リンリンもキャッキャと笑い出す。 「リョウジ先生はコロッケばっかり食べてるから弱いんですのん!」 「そんなことはない。こう見えて逃げ足は速いんだぞ~っ!」  一丁前にリョウジをからかったリンリンの両脇腹を、彼はこちょこちょと擽った。  するとリンリンは、くすぐったくて身体を捩りながら笑い出す。  こんな平和で、楽しい時間がいつまでも続けばいいのに……とサナは思いながら、ガーシュインを見た。  彼の口元にも笑みは浮かんでいたが、今夜の話し合いのことを考えているのだろう。その瞳は一切笑っていなかった。 ***  ニーナは動きやすい水色のワンピースに着替えると、最小限の侍女を連れて自分の船に乗り込んだ。その後からカルムも従者を引き連れて彼女の船に乗り込む。  今日も港は活気があって、ありとあらゆるものが船で輸出され、輸入される。  この様子に、カルムは複雑な気持ちになった。  国王一家が海賊団に拉致されて、王城内は大変なことになっているが、このことは国民には一切知らされていない。

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