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第92話

「本当に、ニーナは強くて賢い女性だ」  彼女のその行動力と芯の強さに感服しながら、カルムは再び歩を進めたのだった。 ***  その日は、特別に長く感じられた。  夕食後に、サーディアンと食堂室で話し合いをすることになっている今日。サナはとてもドキドキして、緊張していた。  普段、緊張なんてしない性格なのに、今はまるで違う自分のように、心臓がドキドキとし、ソワソワと落ち着かない気持ちでいっぱいだった。  今夜、主に話すのはガーシュインになるだろう。  自分はそんなに口が上手くないので、交渉事には不向きだ。  ハルカとリョウジにも立ち会ってもらうが、それはあくまで見届け人としての役割であって、ガーシュインとサーディアンの交渉時に口を出すことはないだろう。  サナだってそのつもりでいる。  すべてはガーシュインにかかっているのだ。 『国土の半分を明け渡すことなく、どうやってこの船を降りるか?』  これがサナやガーシュインたちの、今一番の交渉事だった。 (ガーシュインはどうやって話をするんだろう?)  サナはそればかりを考えて、リンリンに絵本を読んであげている今も、気持ちは上の空だ。 「ねぇ、サナ~。早く続きを読んでくださいのん……」 「あっ……! すまなかった。それじゃあ続きを読むぞ」  そう言うと、サナは急いで絵本のページを捲り、寝室の同じソファーに座る息子に読み聞かせた。

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