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第94話
そう言ってさらに強く抱き締めると、リンリンはふわふわの産毛で覆われた頬を、サナに頬に擦りつけてきた。
(リンリン……)
自分の息子はなんと可愛いのだろう?
そう実感しながらも、愛しいリンリンのために、今夜の話し合いが上手くいくよう、サナは願うしかなかったのだった。
その日の夜は、まるで獣人の細い爪のような月が浮かんでいた。
触れたら怪我をしそうなほど尖っていて、それでいていきるものすべてを魅了するような美しさを放っていた。
食堂室に先に着いたのは、ガーシュイン一同だった。
リンリンを寝かしつけ、侍女に任せたあと、皆で食堂室に集まった。
赤ワインを飲みながら、サーディアンが来るのを待っていたが、待てど暮らせど彼は来ない。
そして夜の11時を回った頃。
サーディアンの執事がやって来て、
「今夜、サーディアン様は体調を崩されまして……その、お話の席に着けないと」
「体調を?」
サナが聞き返すと、彼は困ったように何度も何度も手を擦り合わせた。
「はい。普段はとても健康な方なのですが、時折高熱を出すことがございまして……」
「――そうか。それでは仕方ないな」
高熱が出たのなら仕方がない。そう思ってサナが小さくため息をつくと、もっと気を張っていたらしいガーシュインは、肩透かしを食らったように大きくため息をついた。
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