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第96話

 二人で廊下を歩きながら、ガーシュインは大きく伸びをしながらサナに言った。 「そうだな。もし本当に高熱を出したのなら仕方がないし、嘘をついて今夜の席を辞退したとなれば、それもまたそれで気になるしな」  しかし、サーディアンはその日から一週間も高熱を出し続け、皆が集まる甲板や食堂室にも一切顔を見せることはなかった。  この現状に、サナは『診察室』と書かれた扉をノックし、ゆっくりと開けた。 「――リョウジ」 「サナ、それにガーシュイン様。どうなさいました?」  船内にある診療室を夫婦で訊ねると、白衣を纏ったリョウジが手伝いの侍女とともに、こちらを振り返った。 「ちょっと話があるんだが、いいか?」 「わかった。リリーさん、申し訳ないけど席を外してくれるかな?」  看護師の資格を持つ侍女に声をかけると、リリーと呼ばれた若い獣人女性は、笑顔で会釈して診察室を出て行った。 「……で、話というのはサーディアンのことかな?」 「あぁ。もう一週間以上も高熱を出しているそうじゃないか。大丈夫なのか?」  ガーシュインの言葉に「それなんですが……」と言いながら、リョウジは二人に椅子を勧めた。 「毎日彼を診察しているので、高熱が続いているのは事実です。37度台後半を行ったり来たりしていて、本人もだるそうに毎日眠っています」

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