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第97話
「そうか。俺たちを騙そうとして演技しているわけではないということだな」
サナはリョウジの目を見つめると、彼は大きく頷いた。
「あれは演技ではないね。本当に高熱が続いていて、体力もかなり消耗している……」
「そうか、それは少し心配だな」
サーディアンは、自分たちを拉致監禁している海賊団の頭だ。
だから、こちらが彼の心配をするのはおかしな話だった。
しかし情が移って、心配し、ガーシュインがそう言ってしまうぐらいには、サナたちは彼らから酷い仕打ちを受けていない。
むしろ良い待遇を受けていると心の底から思う。――国土の半分をよこせと、リンリンの命と引き換えに脅されてはいるが。
「でも、この一週間。彼を診察していて、ちょっと思ったところがあって……」
「思ったこととは?」
少し身を乗り出したガーシュインに、リョウジは頷いた。
「はい。彼の高熱は心因性のものなのではないか? と、俺は考えています」
「心因性? と言うことは、心の病ということか?」
「えぇ、そこまで酷い病を罹っているとは思いませんが、きっと彼が高熱を出してしまうほどの何かが最近あったのでしょう。もしくは、過去に……」
「過去……か」
確かに、過去の記憶や経験というものは厄介で、サナも時折悩まされることがある。
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