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第98話
今はガーシュインがいてくれるので、かなり心の傷は軽くなったが、戦場にいた頃の無残な光景や、自らの手でヒトや獣人を切り殺してきた感触は、忘れたくても忘れることができない。
「一体サーディアンは、高熱を出すほど何に苦しんでいるんだ?」
サナの呟きに、ガーシュインはこちらに視線を送りながら口を開いた。
「それは彼にしかわからんだろうな。または伝書鷹の文通相手なら知っているのかも?」
「伝書鷹の相手……か。難しいな。今は船の上にいるから相手を探し出して、捕まえてくることもできないし……」
ギィッと椅子の背凭れを鳴らして反り返り、診察室の白い天井を見上げた時だった。
「失礼いたします!!」
聞き慣れた従者の慌てた声がして、入室の許可を出す前に診察室の扉が開けられた。
「どうした? そんなに息せき切って!?」
驚いた三人が従者の獣人青年を見ると、彼はアワアワと両手を動かしながら、身振り手振りを交えて応えた。
「あの、その……ニーナ様がっ……いや、ニーナ様の船が……10隻もの艦隊を引き連れて、こちらに向かっております!!」
「ニーナが!?」
これに一番驚いたのは、兄であるガーシュインだった。
彼の義妹であるニーナには、半端ではない行動力が備わっている。
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