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第100話
『そちらの船に渡りたい。許可を願う』
この信号旗を見た通信係の船員は、走って船内へと戻って行った。きっとサーディアンか副船長に報告するのだろう。
しかし、ニーナまでこの船に乗ってしまっては、彼女も人質になってしまう可能性がある。
サナとガーシュインは話し合うと、ニーナとリンリンを入れ替えにして、リンリンを船から降ろしてもらうことを提案しに行った。
ひと際豪華な装飾がなされた扉は、サーディアンの部屋だ。
リョウジの見立てによると、どうやら心因性の高熱に苦しんでいるらしい彼に、今このような話をするのは酷かもしれないが、セルディンティーナ王国の将来に関わってくる話だ。
申し訳ないと思いながらも、サナとガーシュインはサーディアンの部屋をノックした。
「はい」
返事とともに扉を開けたのは、サーディアンの執事だった。
「体調が思わしくない時に申し訳ない。少し話がしたくて訪ねたのだが……」
「おー! 俺は元気だ。それなのに執事とリョウジがなかなかベッドから出させてくれなくてな。暇を持て余していたところだ」
ガーシュインの言葉に、奥の方からいつも通り明るいサーディアンの声がした。
この台詞に、執事は大きく扉を開けると、二人をサーディアンのベッドまで案内した。
初めて足を踏み入れた彼の部屋は、サナたちが使っている部屋よりもずっと広く、さすがこの船の主だと感じさせる威厳があった。
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