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第101話
深い緑色のカーテンやファブリックでまとめられた内装は、まるでその色を使うことが許されたのは、高貴な者のみ……といった風情があり、サナの鋭い勘をビリビリするほどに刺激した。
(やっぱりサーディアンは、俺たちが考えている通りの人物だったんだな……)
ぐるりと部屋を見渡していると、殊勝な様子でベッドボードに寄り掛かり、腰掛けているパジャマ姿のサーディアンがいた。
いつも革の三角帽に、黒いシャツと黒いフロックコートを着ている彼しか見たことがなかったので、サナは目を見張った。
編み込みがいくつもなされた濃い茶色の鬣に、フワフワとした同色の体毛が覗くパジャマの胸元。そして熱のせいか、いつもより潤んだ茶色い瞳と濃いピンク色の鼻。
片手を上げてはいるが、気だるげなその笑顔から、彼は確かに熱があるのだと察することができた。
「こんな時にすまないな。実は俺の義妹のニーナという者が……」
「知ってるよ。お兄様を助けるために自ら船で乗り込んできたんだろう? 本当に強い女性だ。で、一体手土産に何を持ってきてくれたんだ?」
「それはわからん。しかし国土の半分をやることはできないが、こちらにもそれ相当の準備はある」
「ほう……それは興味深い。そなたの妹君にも会ってみたいしな。おい、ランバート! 今すぐ俺の着替えを用意しろ」
ランバートと呼ばれた執事は、慌てた様子で答えた。
「ですが、まだお熱が下がっておりません」
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