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第3話

「お久しぶりですね、雅紀さん。もう連絡くれないんじゃないかって思ってました」 1ヶ月と少し前、この男に”結婚している”と告げられた。おれは言わば、不倫相手(?)になるらしい。 「…俺も。もう会ってくれないんじゃないかと思ってた」 7時すぎに急に連絡が入ったときは驚いた。”仕事終わったから、今から少し会えない?”よくもまあ抜け抜けと…なんて思ったのは一瞬の出来事で、また会えると思うと嬉しさのあまり二つ返事で承諾していた。 「最近、どうなされてたんですか?」 「……ちょっと忙しくて」 「お仕事、大変ですもんね」 「…うん、…仕事もそうなんだけど、家庭の方で少し…」 ”家庭”という響きに少し引っかかる。あぁ、奥さんのことか…とそれまでの興味が一気に失せた。 「…実家に帰っちゃって」 雅紀さんは言いづらいそうに語尾を濁す。 「へ?奥さんが?」 「…うん」 「それやばいんじゃないの?おれとのこと、バレちゃったとか?」 「いや、そうじゃないんだけど…」 「よかったー!!!じゃあこれからも会ってくれますよね?!」 「……瑞希くんがいいなら」 はっきりしない物言いに会ったばかりのときは戸惑もした。でもそれにも慣れてくると、優しさが滲み出ていることや雅紀さんがシャイってことに気が付いた。雅紀さんの一つ一つの言動から滲み出てくる優しさに、自分の知らない間におれはすっかり虜になっていた。 オシャレなレストランで夕食を済ませ、少しリッチなホテルに泊まった。もちろん雅紀さんもいっしょだ。

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