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第3話◇

 優月の声に反応したクロが、イケメンの手からポーンとジャンプして歩いてくる。オレに甘えてるクロを見て、彼が言った。 「お前の猫……じゃねえよな?」 「あ、うん。違うけど。たまにエサあげにきてて」  たまにというか、結構な頻度だけど。 「――――……下手にエサとかはあげないほうが良いんじゃねえの」 「……え?」 「お前があげに来なくなったとき、困るのはそいつだろ」 「――――……」  ……そんな事、考えるんだ。  ――――……言い方は、ちょっと怖くて、ちょっと冷たいけど…  言ってることは……優しい、かもしれない。 「あの……この子、向こうにあるコンビニのおばちゃん達にエサ貰ってる子なんだけど……店の裏の方に寝床もあるし。店のおばちゃん達と話して、オレが昼までにそこで缶詰買った日は、そこでは缶詰はあげない事になってて」 「――――……」 「確かに、オレが気まぐれにあげてたら、後でクロが困るかもだけど」  膝をついて、クロを抱きながら、イケメンを見上げる。 「でも、そんな事、普通考えないと思う――――……優しいんだね」  思った事を口にしてみた。ほとんど表情は変わらなかったけれど、一瞬言葉に詰まったみたいで、すぐに目を逸らされてしまった。  缶詰を開け、紙皿にのせて、クロの前に置く。 「ほら、クロ、食べなー」  と、言うより早く、もう食べてる。  可愛くて、クス、と笑ってしまう。 「……クロって?」 「え?」 「お前がつけたの?」 「あ、うん。コンビニのおばちゃんたちは名前はつけてなかったみたいで。つけさせてもらった。もともと、ずっと黒猫ちゃんて呼んでたらしくて。クロ、て呼んでる」 「……超安易。そのままじゃんか。センスの欠片もないな……」 「う……」  んー……まあ。その通りだけど。  ……良い声で、ぐさっと、刺さないでほしい……。  クロがあっという間に平らげたので、その缶と紙皿をビニールにしまってから、その頭をよしよし、と撫でた。 「美味しかった?」  ……ああ、可愛いなあ。  もふもふしてて。撫でてあげると、気持ちよさそうで。  ほんと可愛い生き物だなあ、猫って。  ……癒される。 「なあ、ちょっと立って」 「え?」  急に二の腕を掴まれて立ち上がらされた。せっかくクロを撫でてたのに、あっという間に引き離されてしまった。 「え、なに?」  突然目の前に、超がつく程の、イケメン。 「……キスさせて?」 「え?」 「良い? 拒否らないなら、するけど」 「え、 え? なに――――……」  顎に触れられて、上向かせられたと思ったら、急に、めちゃくちゃ近づいてきて。  唇にふわ、と柔らかいものが触れた。

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