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第10話◇

 ……言い方をどんなに考えても、そのまま言うしかない。  諦めて、話し出した。 「……あの、さっきね。クロのいる所で会って……」 「神月玲央に?」 「うん。そしたら急に……されて」 「何?」 「だから……されて」 「……何されて?」 「……っす…」 「優月、何も聞こえないんだけど…」  相槌がだんだん険しくなってくる美咲に苦笑いしながら、「優月、はっきりいって?」と、智也が優しく言う。  頑張って、次こそ。で口を開いた。 「…………きす……されて……」  今度は聞こえるかなという声で、なんとかかんとか、言葉を出した瞬間。  二人は、ぴし、と固まって。あ、聞こえたなと、分かる。  まじまじと、数秒、無言で、見つめられた。 「きす?」  先に声を出したのは、美咲だった。 「きすってキスのこと?――――……唇に?」 「……は、い」  なぜか敬語で答えてしまう。 「……どんなキス? 間違って触れちゃったとか?」 「……いや……あの」 「……濃いキス? ディープなやつ?」 「美咲、声押さえて」  智也が、眉をひそめながら、美咲に突っ込んでる。 「……間違ってとかじゃなくて……なんか、クラクラするような……長いやつ」  そう言うしか無くて言ったら、美咲の目が据わる。 「……だって、優月、ファーストキス……よね?」 「……うん。そう……なんだけど」 「……は? なにやってくれてんの、あいつ。 ぶん殴りに行こう、智也」 「えっ、待って」  がたん、と立ち上がった美咲に驚きすぎて、咄嗟にその手を掴む。 「いやいや、待って、待ってよ、美咲」 「なに?」 「オレが、良いって、言っちゃたんだよ」 「……?」 「……していいかって、聞かれて――――……頷いちゃったんだ」  美咲は何か言おうとしたけれど、言葉にならなかったみたいで。  そしてまた何か言いかけて、また止まって。  すとん、とまた椅子に座った。  握った手を、口に押し当てて、眉をひそめたまま、オレを見つめてくる。  …美咲が、言いかけて黙るなんて、初めてかもしれない。  うう。どうしよう。 「……整理、しようか、優月」  黙ってやり取りを見ていた智也が、ゆっくり口を開いた。  うん、と頷くと。 「会って、キスしていいか、聞かれて、優月がオッケイして、それで、キスされて――――……まではあってる?」 「……あってる」 「それで? キスのあとは?」 「……バンドの練習があるからって電話で呼び出されてたから、行っちゃったんだけど……オレと寝る気になったら、月曜あそこに来てって言われた」 「は?」  美咲のたった一声が、怖い……。 「……なに、あいつ、頭おかしいの?」 「――――……う、うんと……」 「優月、なんであいつは、お前にそんなこと言ったの?」 「……興味が湧いたって言ってた。オレと寝てみない?て聞かれて」 「……サイテー野郎……」  あ、やばい。  美咲がどんどん口調が荒くなっていく……。

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