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第11話◇
「……優月、何て答えたんだ?」
「……答えてない。無理なら来なくていいけど、来いよ、て言われて。そのまま返事しない内に、もう行っちゃったから」
そこまで言うと、もう何も言うことは無い。
「……何で、良いなんて、言ったの?」
美咲の、思ったよりも静かな声。
「……それが……よく分かんなくて」
2人が黙って、まっすぐ見つめてくる。
そこから。ながいこと何も言わない。
オレは、もう完全に無言で。
テーブルの上のペットボトルをひたすら目に映しながら、2人の言葉をただひたすら待つ。
智也が、ふ、と息をついて、沈黙を破ってくれた。
「……オレは、優月がいいなら、男でも気にしないけど――――……あいつかあ……」
うーん、と、頭を掻いてる。
「あたしだって、優月が幸せならいいよ」
美咲もそう言ってから。
ちら、と視線を向けてくる。
「でもそれ、付き合って、じゃないのよね。 キスしよう寝ようって事よね?」
「……うん、そう」
「セフレって、事よね?」
「……そうとも言われてない」
「1回だけってこと?」
ますます機嫌が悪くなる、美咲。
「てか、分かってるの? セフレって何かちゃんと知ってる? しかも、あいつ、一夜限りとかも入れたら、履いて捨てるほどセフレが居るって。そんなのに、優月がなれるの?」
「――――……分かんない」
答えた一言に、美咲どころか智也まで、急にオレをまっすぐ見てきた。
「分かんない??」
2人が当時に、同じ言葉を口にした。
「――――……だって……オレ」
俯いてしまう。
「……玲央の側に、居たいって、思っちゃって……」
「――――……」
「――――……」
2人にまじまじと見つめられる。
「……ダメ。優月の気持は尊重してあげたいけど、それだけは、ダメ」
「オレもこれは……賛成はできないな。優月、きっとすぐに辛くなっちゃうんじゃないかと思うから」
「――――……だよね……」
うん。分かってるんだ。
普通に考えたら、ありえない。
さっきのキスだけだって、ありえない。
でもって、あんなありえないことをする人だから、きっと他の人にも、そんなありえないことをしてるんだろうとも予想できるし。
……分かってる。
2人の言う事、ちゃんと、分かってるし。
……そう言われるだろうなと、思った。
言ってほしくて、話したのかも。
1人じゃ、もしかしたら、行ってしまいそうで。
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