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第15話◇

 ぽけ、とした顔で、ひたすら見上げてくる瞳に。  何か言わないといけない気がして。 「……悪い――――……なんかあんまり無邪気に猫と戯れてるから」 「……え?」 「……感じたらどーなんのかなって、すっげえ、興味が湧いて……」  ……つい、思った通りに口にしたら。  びっくりした顔で、じっと見つめてくる。 「……そんな顔、すんだな……」  キスした時の顔は――――……もっと、乱したいと、思う位。  ふ、と笑って、その頬に触れてみる。  さっきも思ったけど――――……なんか、柔らかい。 「なあ――――……オレと寝てみない?」  もっと触れてみたい。  じ、とまっすぐな瞳を見つめ返す。  たぶん、寝る、という単語を理解した瞬間に、また赤くなって。  ただ一生懸命見上げてくるのが、何だか。  ――――…なんだか… すごく…。 「正直、好みのタイプじゃねえんだけど……」 「……っ」  思わず言ってしまった言葉に、なんかものすごく複雑そうな顔をしてる。  素直…。  ――――…なんか、ものすごく、素直。 「そんな顔されると……すげえ興味ある」  まっすぐすぎるその瞳に笑ってしまいながら、その頬に触れる。何をしても、ただひたすらに、見上げてくるその瞳から、何だか目が離せない。  またふ、と笑ってしまう。 「……何で、お前、何も言わねえの?」  表情は色々変わるから、きっと何かすごく思ってるんだろうけど。  言葉には何も出てこないので、そう聞いてみた。すると。 「――――……びっくり、して」  掠れた声で、それだけ、呟く。  びっくりしすぎて、何も言えないのか、と思うと。  何だかすごく優しい気分になって、その顔を、見つめていると。 「……い、いつも……こんなこと、してるの?」  急にそんな質問。 「ん? こんなことって?」 「会って、ちょっとで、こんなこと……」  会ってちょっとで――――…  まあ、正直しなくもないかな。  会う場所がクラブとかなら。で、お互い同意なら、あるけど。  ただ、こんなところで、望んでもない、こんな普通の男相手には……。  ……間違いなく、しない。   「んー……こんな所で、こんな風にはしたことねーな。完全に合意の、してほしそうな奴にしかしないんだけど……」 「……っ――――……じゃ、なんで、オレに……」  そう聞かれると。もう、答えは、一つしかない。 「……悪い。ほんとに、わかんねえ。 すっげえ興味が湧いたとしか……  びっくりさせて、ごめんな」  興味が湧いた。  キスしたらどうなるのか。感じたら、どう乱れるのか。  あとは――――……何だかこいつ自身というのか……。  とにかく、何にしても、「興味」。  そっと、またその頬に触れる。すり、とわざとくすぐったいように触れると、思い通りの反応で体が小さく震えた。  ――――…感じやすそう。  もっと、触ってみたい。 「……なあ、どうする?」 「……どうするって?」 「――――……オレと寝てみる?」 「――――……」  びっくりした顔。  その後、視線を少し彷徨わせて、色々考えてるらしいので、待っていると。 「……会ったばっかり……だし」  そう言われた。  ――――……なるほど…。  そういうことするまでに、時間を費やしたい訳だ。  …まあ…… 完全に、そういうタイプだろうけど…。 「――――……こういうのって感覚だから、したいかどうかなんてすぐ分かると思うけど。 無理な奴はどんなに会ったって、無理」  そう言うと、特に反論はないのか、黙ってしまった。 「お前は? ――――……オレ、無理?」  ――――……無理じゃないって、言えよ。  そんな風に思いながら、その瞳をまっすぐに見つめた。

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