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第25話◇

 5限が終わって正門で待っていると、美咲と智也がすぐに現れた。  なるべく明るく、普段通りで2人と歩く。  駅まで15分。そこからカラオケに行って、中に入るまで10分。  つまり、学校を出てもう25分。  美咲が歌い出したのを聞きながら、ドリンクのストローを口にくわえた。    ――――……もし、約束通り来てくれていたとしても、もう帰った、よな。  ……怒って、帰った、かな。  ……いやいや。  来てないかもしれないし。  そもそも、来たって、ただ、オレに興味があるっていうだけの……。  ……興味とか、意味、わかんないし。  オレはそんなの……。  やだ、し……。 「――――……」  ほんとに――――……嫌なのかな、オレ。  玲央と居たいって言ったのはオレなのに。  立ち去ろうとしていた玲央を、オレが、止めたくせに。  良いのかな、こんな、形で、  来てくれたかどうかも分からないような、そんな形で、終わりにして。  無理なら無理と、伝えるべきだったんじゃないのかな。 「優月の番だよ」  美咲の歌が終わる。  ストローをくわえてぼうっとしてたら、智也につつかれた。 「あ、うん……」  歌い出そうとして。  ――――……止まってしまった。  2人はオレを見て、黙ってる。 「――――……あの……」  どうしよう。今からでも、行きたいって……。  そう言ったら、何て、言われるかな。  どうしよう。  言えずに黙ってたら。 「――――……優月、行ってくれば?間に合うかは分かんないけど」  智也が、そう言って、苦笑い。 「嫌なんだろ、すっぽかすの。オレも美咲も反対ではあるけど……優月の事だし、強制する権利はないよ。ね、美咲?」 「――――……ないけど、優月が泣かされたら、許せないけど……」  2人の言葉に、しばらく動けない。 「――――……オレ、行っていいの?」  そう聞いたら、智也は、更に苦笑い。 「だから、それを決めるのはオレ達じゃないでしょ。ほんとはさっき、優月が正門に来なくても仕方ないって、美咲と話してたんだよ。でも、お前はこっち来ちゃってさ。――――……でもそれって、あっちに行きたくないんじゃなくて、オレ達に心配させないようにだろ?」 「――――……」  なんて返事をしたらいいのか分からなくて、2人を見つめる。 「あれだけ言っても……ここまで来てもまだ、そんなに行きたいんでしょ?」 「――――……美咲……」 「今行っても……5限終わってから、1時間弱経つからさ。居ない可能性の方が高いと思うよ?」 「――――……うん。分かってる」  頷くと、美咲と智也は、苦笑い。 「オレと美咲、このまま2時間カラオケ終わったら、どこかでご飯食べてる。移動したら連絡入れておくから。優月が1人になるなら、おいで」 「…智也…」 「もし、あいつがまだ待ってて、優月がそうなろうって決めるなら……まあ、複雑だけど、また話聞くから。いいよな、美咲?」 「――――……あいつの事は、あたしは、嫌だけどね」 「美咲って」  智也が美咲に突っ込んでる。 「優月の決める事だよ」  智也に言われて。  うん、と頷いて立ち上がる。 「――――……ありがと。……会えたら、話してくる」 「がんばれ」 「泣かされないでよ?」  智也と美咲に送り出されて、カラオケを後にした。  学校までの道を、急ぐ。  5限が終わって、そのまま行けた時間から考えると、もう、1時間。  待ってないよな……  そもそも、来たのかどうかも分からないし。  オレ、今、急ぐ意味、あるのかな。  ……きゅ、と、胸が痛い。  行けば良かった。  あんな数分で、こんなに惹かれた人を、何で会わずに逃げようなんてしたんだろう。来てくれなかったら諦められたし、来てくれたなら、ほんの少しでもオレの側に居てくれようとしてくれた事、それだけでも嬉しかったのに。  玲央に、会いたい。声、聞きたい。

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