25 / 856
第25話◇
5限が終わって正門で待っていると、美咲と智也がすぐに現れた。
なるべく明るく、普段通りで2人と歩く。
駅まで15分。そこからカラオケに行って、中に入るまで10分。
つまり、学校を出てもう25分。
美咲が歌い出したのを聞きながら、ドリンクのストローを口にくわえた。
――――……もし、約束通り来てくれていたとしても、もう帰った、よな。
……怒って、帰った、かな。
……いやいや。
来てないかもしれないし。
そもそも、来たって、ただ、オレに興味があるっていうだけの……。
……興味とか、意味、わかんないし。
オレはそんなの……。
やだ、し……。
「――――……」
ほんとに――――……嫌なのかな、オレ。
玲央と居たいって言ったのはオレなのに。
立ち去ろうとしていた玲央を、オレが、止めたくせに。
良いのかな、こんな、形で、
来てくれたかどうかも分からないような、そんな形で、終わりにして。
無理なら無理と、伝えるべきだったんじゃないのかな。
「優月の番だよ」
美咲の歌が終わる。
ストローをくわえてぼうっとしてたら、智也につつかれた。
「あ、うん……」
歌い出そうとして。
――――……止まってしまった。
2人はオレを見て、黙ってる。
「――――……あの……」
どうしよう。今からでも、行きたいって……。
そう言ったら、何て、言われるかな。
どうしよう。
言えずに黙ってたら。
「――――……優月、行ってくれば?間に合うかは分かんないけど」
智也が、そう言って、苦笑い。
「嫌なんだろ、すっぽかすの。オレも美咲も反対ではあるけど……優月の事だし、強制する権利はないよ。ね、美咲?」
「――――……ないけど、優月が泣かされたら、許せないけど……」
2人の言葉に、しばらく動けない。
「――――……オレ、行っていいの?」
そう聞いたら、智也は、更に苦笑い。
「だから、それを決めるのはオレ達じゃないでしょ。ほんとはさっき、優月が正門に来なくても仕方ないって、美咲と話してたんだよ。でも、お前はこっち来ちゃってさ。――――……でもそれって、あっちに行きたくないんじゃなくて、オレ達に心配させないようにだろ?」
「――――……」
なんて返事をしたらいいのか分からなくて、2人を見つめる。
「あれだけ言っても……ここまで来てもまだ、そんなに行きたいんでしょ?」
「――――……美咲……」
「今行っても……5限終わってから、1時間弱経つからさ。居ない可能性の方が高いと思うよ?」
「――――……うん。分かってる」
頷くと、美咲と智也は、苦笑い。
「オレと美咲、このまま2時間カラオケ終わったら、どこかでご飯食べてる。移動したら連絡入れておくから。優月が1人になるなら、おいで」
「…智也…」
「もし、あいつがまだ待ってて、優月がそうなろうって決めるなら……まあ、複雑だけど、また話聞くから。いいよな、美咲?」
「――――……あいつの事は、あたしは、嫌だけどね」
「美咲って」
智也が美咲に突っ込んでる。
「優月の決める事だよ」
智也に言われて。
うん、と頷いて立ち上がる。
「――――……ありがと。……会えたら、話してくる」
「がんばれ」
「泣かされないでよ?」
智也と美咲に送り出されて、カラオケを後にした。
学校までの道を、急ぐ。
5限が終わって、そのまま行けた時間から考えると、もう、1時間。
待ってないよな……
そもそも、来たのかどうかも分からないし。
オレ、今、急ぐ意味、あるのかな。
……きゅ、と、胸が痛い。
行けば良かった。
あんな数分で、こんなに惹かれた人を、何で会わずに逃げようなんてしたんだろう。来てくれなかったら諦められたし、来てくれたなら、ほんの少しでもオレの側に居てくれようとしてくれた事、それだけでも嬉しかったのに。
玲央に、会いたい。声、聞きたい。
ともだちにシェアしよう!